【心理学】ブラック企業が絶対に無くならない3つの理由
ブラック企業がなくならないのは誰のせいか?
それは、企業側でも国でもなく、ブラック企業で働いている人のせいです。
もちろん、労働基準法違反をしている企業や本腰入れて取り締まってくれない国にも当然責任はあります。しかし、なくならない理由の主な原因は労働者にあるのです。
被害を被っているブラック企業会社員に非があるというのはとても心外だと思います
が、一概にブラック企業が悪いとは言い切れない、人の心理に基づく3つの理由があります。
本記事では、なぜブラック企業が存続し続けられるのかを心理学的な側面から解説したいと思います。
なぜ労働者の行動が根本原因なのか?
企業が存続するためには、第一に利益を継続的に生み出すことが必要です。
また、日本のような資本主義国では、競争原理が働くため同業他社よりも優れたサービスを提供しなくては淘汰されてしまいます。
利益は売上高から必要経費を差し引いたものです。
したがって、いくら売り上げがあっても経費がかさんでしまえば利益は出せません。
この経費の中には人件費(従業員へのお給料)も含まれます。
つまり人件費を削れば会社の利益は大きくなります。
ブラック企業では、サービス残業や賃金の未払い等で人件費を安く抑えているので、同業種のホワイト企業よりも低価格でサービスを提供しても会社の利益は確保できます。その結果、ホワイト企業はブラック企業に価格競争で負けてしまうのです。
しかし、合理的な社会であれば、労働者は良い労働環境を求めて転職し、ブラック企業は淘汰されるはずですが、実際にはそうなりません。
それには、ブラック企業を辞められない心理的な3つの理由があるのです。
そして、労働者が辞めないことによりブラック企業はますます増長してしまうサイクルが生み出されています。
理由① 現状維持バイアス
理由の1つに労働者の現状維持バイアスが挙げられます。
現状維持バイアスとは、プロスペクト理論に基づくバイアスの一つで、「今の状態のまま」を好む心理傾向です。
現状維持バイアスは多かれ少なかれ誰しも持っているとされています。
具体例としては、
- もっと安いケータイプランがあるのに、なかなか変更しようと思わない
- 選挙でとりあえず現政権の政党に入れてしまう
- 定食屋でいつも同じメニューばかり頼んでしまう
などは、この現状維持バイアスが主な原因と言われています。
これと同じようにブラック企業労働者は労働環境が悪いにもかかわらず、現状維持バイアスの影響でなかなか転職に踏み切ることができません。
これは、現状維持バイアスの特性として、変化した後に得られるメリットよりもデメリットの方を大きく考えてしまう傾向があるからです。
「今の会社も悪いけど、転職先の会社はもっと悪いかもしれない」
「転職に失敗して、今の会社にもいられなくなって無職になったら人生終わりだ」
などと重く考えてしまいがちです。
この現状維持バイアスを持っている限り、よほどデメリットが小さくないと行動に移すことができません。
しかし、現状維持バイアスを打開する方法があります。
それは、今の状態と変化後の状態の情報をできる限りたくさん得ることです。
知ることによって現状維持バイアスは小さくなると言われています。
転職に関しては、今の会社と転職先の会社の待遇(年収、休暇取得率、労働時間、福利厚生など)や転職に関する情報を調べておくと、現状維持バイアスが発動しにくくなります。
理由② 保有効果
もう一つの理由に、労働者の保有効果があります。
保有効果とは、自分が持っているモノの価値を高く評価し、手放したくないと感じる心理効果です。
この効果は物だけでなく環境にも反映されます。
つまり、労働者は自分の置かれている労働環境を実際よりも高く評価してしまいがちです。
ブラック企業に勤めているにもかかわらず転職できないのは、保有効果によって手放してしまったらもったいないと錯覚してしまっているんですね。
この保有効果の解決法としては、先程の現状維持バイアスと同様に情報を仕入れることです。
知ることによって自分の感覚が本来の価値に近づいてきます。
そして、よく考えれば転職した方がメリットが大きいということに気付くでしょう。
理由③ サンクコスト効果(コンコルド効果)
労働者がブラック企業から逃げることができない3つ目の理由として、労働者のサンクコスト効果が挙げられます。
別名コンコルド効果とも言います。
サンクコスト効果とは、それまでに支払ったお金、時間、労力などのコストを何とかして取り戻したいと思う心理傾向です。
具体例としては、
- UFOキャッチャーで、1,000円つぎこんでも取れなかったけれど、ここで諦めたら使った1,000円がムダになると思い、さらにお金をつぎこんでしまう。
- 新しいウイルスに対するワクチンの開発に多くの資金と人材を投入していたが、完成まであと少しというところで他社に先にワクチンを開発されてしまった。市場で1位シェアを獲得するのが困難になってしまったが、せっかくここまでやったのだから赤字覚悟で開発まで邁進する。
これと同じように、たとえブラック企業だとしても何度もの面接をくぐり抜けて勝ち取った内定と今まで頑張ってきた労力と時間を考えたら、転職するのがもったいないと感じてしまい、結局辞められなくなってしまいます。
さらに、日本社会における年功序列制がサンクコスト効果に拍車をかけていると考えられます。
勤務年数に応じて徐々にお給料が上がっていくシムテムは「ここで辞めたら今までの労力がムダになる」という考えをますます強めてしまいます。
これを克服するためには合理的な考えを持つことです。
過去に支払ったコストは考えずに、理論的に将来プラスの価値が生み出せるかを考えた方がいいでしょう。
まとめ
ブラック企業を存続させている主な原因は「ブラック企業て働く人」にありました。
その理由は、労働者が皆ブラック企業を辞めずに低賃金で働き続ける限り、正規の賃金を支払っているホワイト企業の利益が上がらずに太刀打ちできなくなってしまうからです。
ブラック企業を淘汰するためには、労働者がブラック企業を辞めるしかありません。
しかし、辞めたくても辞められない心理的な理由が3つありました。
- 現状維持バイアス・・・現状維持を好み、環境の変化を嫌う心理傾向
- 保有効果・・・いったん保有すると、価値が高く感じる心理傾向
- サンクコスト効果(コンコルド効果)・・・今までに支払ったコストを取り戻したいと思う心理傾向
これらの心理効果をよく理解することでブラック企業から逃げることができるかもしれません。