対応バイアスとは?特徴・具体例・原因・克服法を分かりやすく解説
対応バイアスは、よくある偏見の一つです。
例えば、あなたは列に割り込んでくる人を見て
「マナーのない人だ」
と思ったことはありませんか?
おそらく、ほとんどの人がそう思うでしょう。
でも、もしかしたらその人には何か特別な事情があるのかもしれません。
このように、「他人の行動を、その人の人格に由来するものだと決めつける」傾向を心理学では、対応バイアス(バイアス:偏り)と呼んでいます。
- 定義
- 原因
- 具体例
- デメリット
- 克服法
についてわかりやすくご紹介します。
対応バイアスとは?
定義
他人の態度に対して、環境的・状況的要因を過小評価し、個人的・性格的要因を過大評価する傾向です。
(参考文献:D.T. Gilbert, and E.E. Jones, Perceiver-induced constraint: Interpretations of self-generated reality, Journal of Personality and Social Psychology, 50 (1986), 269–280.)
対応バイアス(Correspondence bias)という言葉は1986年に、心理学者のギルバートとジョーンズによって初めて使われました。
対応バイアスの意味を、もう少しかみ砕いて説明すると、
「他人が何か行動を起こしたとき、その行動はその人の性格によるものだと考え、その人が置かれている状況によるものではないと考える」傾向のことです。
例えば、ある母親がその子供を怒鳴りつけているシーンを見かけたら、あなたはどう思いますか?
A 「気性の荒い母親だ」
B 「子供が何か悪いことでもしたのだろう」
おそらく多くの人はAを選ぶと思います。
Aの選択肢のように、激怒した原因を母親の性格によるものだと考える傾向が、対応バイアスなのです。
どのようにして対応バイアスが発生するのか?
心理学者のギルバートとマロンは、対応バイアスが発生するメカニズムを調査し、以下の4つの理由があると結論づけました。
- 状況を考慮する前に自動的に判断するから
- 状況を把握しきれないから
- 現実と自分の予想がズレているから
- 他人の性格を間違って推理してしまうから
(参考文献:D.T. Gilbert and P.S. Malone, The correspondence bias, Psychological Bulletin,117 (1995), 21-38.)
上記の4つの理論は難しいので、分かりやすく表現をデフォルメしています。
それでは、順に詳しく説明します。
状況を考慮する前に自動的に判断するから
対応バイアスが発生する最大の原因は、状況を考えに入れる前に即座に判断してしまうことだと説明されています。
まず、人は相手の行動の要因を推理するときに、
- 相手の行動をカテゴリー分けする
- 相手の感情を読む
- 状況を考慮に入れる
という順番で頭の中で考えていき、最後に判断を下します。
例えば、あなたが家に着くと、あなたの両親が口論していました。
あなたはまず、
「①夫婦げんかだ」
とカテゴリー分けするでしょう。
次に、
「②父に対して、母が激怒している」
と感情を読みます。
そして、辺りを見回して
「③結婚記念日のプレゼントがないという状況」
に気づいたあなたは、最終的に
「父が結婚記念日を忘れたから、母が怒っているのかもしれない」
と判断するでしょう。
実は3つの順序のうち、①と②は脳が自動的に処理してしまうと言われています。
自分が意識的に考えるのは③だけです。
つまり、逆に言うと、意識して状況を考えてあげないと、思考が②で止まったまま判断してしまうのです。
先程の例で言うと、
「②母が怒っている」
で止まってしまい、その結果、母は怒りっぽいと性格的な原因に行き着いてしまうのです。
これが対応バイアスが発生する最も有力なメカニズムです。
状況を把握しきれないから
対応バイアスバイアスが起こるもう一つの理由は、行動した人の事情や状況が、本人にしか分からないことです。
つまり、他人からすると状況が見えにくいので、行動した人の性格に原因を帰属させるしかないのです。
例えば、あなたが「殺人事件」のニュースを見たとします。
おそらくあなたは「犯人はかなり凶悪だ」という第一印象を抱くでしょう。
しかし、実は犯人は正当防衛の結果、相手が不運にも亡くなってしまったのだとしたら、果たして性格は「凶悪」と言えるでしょうか。
このように、他人は、行動者の置かれている状況を把握しきれていないから対応バイアスが起こるのです。
現実と自分の予想がズレているから
対応バイアスが起こる3つ目の原理は、自分が他人の行動を見たときに、実際とは少し違って予想してしまうことです。
例えば、やさしい性格の人は、いかなる状況であっても暴力は振るわないだろうと、多くの人は予想してしまいます。
しかし、実際には、やさしい性格の人だって状況によっては暴力を振るうこともあります。
また、職場のデスクの上がとても散らかっている人は、おおざっぱな性格の人だろうと、ほとんどの人は予想するでしょう。
しかし、実際には几帳面な人でも、仕事がとても忙しければ机が汚くなってしまうときもあります。
このように人は、他人の性格とその人の行動を過剰に関連付けてしまっているのです。
その結果、実際と自分の予想がズレて、対応バイアスが生じるのです。
他人の性格を間違って推理してしまうから
一般的に、人は他人の行動から、その人の性格を考えようとします。
しかし、逆に周りの状況から、その人の性格を推理することがあります。
それが、対応バイアスを引き起こす場合があります。
例えば、あなたがとても怒っている人を見かけたら、「怒りっぽい人なのかな」と思うでしょう。
しかし、誰が見ても明らかに怒ってもおかしくない状況で怒っていたならば、怒りっぽい性格とは思わないはずです。
普通の人が怒らない状況で怒るからこそ、行動が性格に帰属されるのです。
ところが、怒ってもおかしくない状況でも、その状況を上回るような勢いで激怒していたら、さすがに怒りっぽい人だと思われるかもしれません。
このように同じ「怒る」でも、さまざまな状況によって人の感じ方は変わります。
つまり、相手の真の気持ちや性格を推理することは難しいのです。
そして、性格の推理を間違えてしまうと、対応バイアスが生じてしまうのです。
対応バイアスの具体例は?
対応バイアスのような偏見はよくあることです。
そのため、日常生活で目にする機会も多いでしょう。
犯罪者=極悪人?
罪を犯すような人は基本的には悪い人です。
そして、罪を重ねる人や重い罪を犯した人は、とても凶悪なイメージがあります。
しかし、犯罪を繰り返す人ほど性格が残忍かと言われれば、そうとは限りません。
一部の犯罪者は、出所しても社会で生きていく術を知らないために、仕方なくまた犯罪に手を染めてしまうケースもあると言います。
多くの人は、第一印象で犯人=根っからの悪人と考えがちですが、少なからず状況的な要因もあるのです。
助けてくれない=思いやりがない人?
仮に、あなたが大学のレポートが分からなくて困っていたとします。
その上、明日までに提出しなければならないため、とても焦っています。
そこで、あなたは同じ学科の友人に協力をお願いしましたが、残念ながら断られてしまいました。
おそらくあなたは、
「なんて思いやりのないヤツなんだ!」
と感じることでしょう。
しかし、よく考えてみれば、きっと相手にも都合があるはずです。
もしかすると、相手もあなたのことを助けたいと思っているのに、どうしてもやらなきゃいけない用事があるのかもしれません。
レポートを助けてくれないからといって、思いやりがないとは限らないでしょう。
助けてくれる=やさしい人?
上の例と同様に、またあなたが大学のレポート課題で困っているとします。
友人に助けを求めたところ、今度は快く承諾してくれました。
おそらくあなたは、
「友達思いのやさしいヤツだ!」
と思うでしょう。
しかし、もしその友人が異性であるならば、あなたに下心を抱いているだけかもしれません。
あるいは、何か見返りを求めているのかもしれません。
「助けてくれた」という行動だけで、相手の人柄を判断するのは、典型的な対応バイアスでしょう。
対応バイアスによる不利益
対応バイアスは、物事を自動的にすばやく判断してしまうために起こる現象です。
そのため、事態に早く反応できるというメリットがあると思います。
その一方で、「騙されやすくなる」というデメリットもあります。
例えば、あなたに対し、誰かがとても親切なことをしてくれたとします。
たとえそれがあなたの財産目的の行動だとしても、もしあなたが対応バイアスの強い人間ならば、
「この人は、とてもイイ人だ!」
と素直に感じてしまうかもしれません。
対応バイアスが強ければ、それだけ状況を考慮できないことになりますので、騙される可能性が高くなると言えるでしょう。
対応バイアスの克服法
対応バイアスは、できることなら克服するべきです。
なぜなら、人間関係において無用のトラブルを発生させるリスクがあるからです。
そして、将来的に対応バイアスを克服できたならば、他人の行動が
・環境的な要因で引き起こされたのか?
・本人の性格から引き起こされたのか?
を的確に判断できるようになります。
ぜひ次の3つの方法を実践してみてください。
相手の行動の原因を意識的に考える
対応バイアスのような偏見を減らすには、
「なぜ相手はそのような行動をしたのか?」
「そのとき周りの状況はどうだったか?」
など、相手の行動の原因を意識して考えることです。
なぜなら、対応バイアスは、無意識に脳が判断してしまうために起こる現象だからです。
そのため、判断するときに意識的に物事の原因を考えることによって、対応バイアスを抑制することができるのです。
冷静に状況を分析する
対応バイアスが強い人は、すばやく結論を出そうとする傾向があります。
すぐに判断すると、状況に関する情報がほとんど入ってきません。
そのために、間違った判断をしてしまうのです。
そこで、一度冷静になり、意図的に状況を分析する時間を作れば、対応バイアスに対処できると考えられます。
相手の行動に利害が伴うか調べる
相手の行動に
・利益が生じるか
・損害が生じるか
その行動の背景を知ることができれば、対応バイアスを抑制することができます。
例えば、あなたは入社したての男性社員で、同じ部署の先輩の男性が、
「俺のおごりで、今日は飲みに行こう!」
と誘ってくれたとします。
この場合、相手は金銭のマイナスが生じてでも、あなたのことを気にかけてくれているので、純粋に面倒見の良い先輩の可能性が高いです。
一方で、もしあなたが女性の新入社員で、かつ相手があなたに好意を持っているのならばどうでしょう?
相手には、「あわよくば交際できるかもしれない」という利益が生じることになるので、一概に面倒見の良い先輩とは言い切れません。
このように、相手の行動に利害が伴うよく調査することで、相手の真の目的をはっきりさせることができるでしょう。
まとめ
最後に、本記事の内容を簡単にまとめました。
②他人の事情を知らないから
③自分の予想しているほど減じるはあまくないから
④他人の気持ちを読み違えてしまうから
②冷静に状況を分析する
③相手の行動に利害が伴うか調べる
最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。