日本はなぜ謎マナーだらけなのか?【4つの心理学的理由】
社会人になると多くのマナーを覚えさせられると思います。
でも、マナーの中には「これ何の意味があるの?」というような謎マナーもありまりますよね?
そのような謎マナーをこれからやり続けなければならないのだとしたら、とても苦痛だと思います。
では、どうしたら謎マナーを回避できるのでしょうか?
そもそも、謎マナーはなぜ生まれたのでしょうか?
本記事では、その理由を心理学的な視点から考察していきたいと思います。
謎マナーとは?〜正しいマナーとの違い〜
謎マナーとは、「やる目的が明確でない無意味なマナーやローカルルール」です。
そもそも、一般的な「マナー」を広辞苑で調べると、「行儀。作法。」と出てきます。
また、Wikipediaで調べると、「マナーとは、人と人との関わりで当然その場面でしかるべきとされる行儀・作法」と書いてあります。
つまり、マナーは、「社会で人と人が気持ちよく生活する上で〝やったほうが良い″行動」ということだと思います。
そして、マナーには次のような目的があると考えられます。
・相手への思いやり
・作業の効率化
・作法の美しさ
一方で、謎マナーにはこれらの目的が欠けています。
これらの目的がないのであれば、そもそも行わない方が良いです。
しかし、昔から引き継がれているような謎マナーを断ち切るのはなかなか難しいことでもあります。
また、人によっては正しいマナーと謎マナーの線引きが異なるので、注意が必要です。
謎マナーの具体例
謎マナーの具体例には次のようなものがあります。
【仕事編】
・上司へ許可をもらう書類では、上司へのお辞儀するようにハンコを傾けて押す
・金属製の名刺入れは使ってはいけない
【飲み会編】
・上司と乾杯するときは、自分のグラスを少し下げて、上司のコップに当てる
・乾杯の挨拶で「今日は無礼講」発言は、"建前"として受け取る
【就活編】
・就活イベント等での「服装自由」は、実質スーツ一択である
・面接のときのノックは3回が原則
・「おかけください」と言われるまで、座ってはいけない。
【会社訪問編】
・茶碗で出されたお茶は飲んでよいが、ペットボトルのお茶や袋に入った茶菓子は開封してはいけない。
・「お茶を飲む = 商談をのむ」となるので、商談のときはお茶を飲んではいけない
(謎マナーかどうかの判断には、個人差があることをご了承ください。)
謎マナー乱立の理由とは?
上で示したような謎マナーがどうしてたくさんはびこっているのでしょうか?
それには、以下のような理由が考えられます。
【理由①】マウント取りたいから
謎マナーやローカルルールを使ってマウント取りたいだけの人がいます。
「こんなの常識中の常識だぞ」
「こんなことも知らないのか」
と言ってくる会社の上司もいるでしょう。
このような人の特徴として、承認欲求と優越欲求が強いことが挙げられます。
優越欲求:相手より優れていたい
これらの欲求のはけ口として、謎マナーが利用されていると考えられます。
謎マナーを知っているという立場を利用して、それを知らない人にマウントを取って満足しているのです。
その結果、よく分からない謎マナーが世の中に蔓延していくのでしょう。
【理由②】日本の文化的自己観
日本の文化的自己観が、マナーとともに謎マナーまでをも量産してきたと考えられます。
自己観とは、「自己に対する価値観」です。
分かりやすく言い換えると、「自分は○○な人間だ」というような自分に対する考え方です。
そして、この自己観はそれぞれの国や地域で文化的な違いがあると言われています。
大まかには欧米と東アジアで分けられ、
東アジア:相互協調的な自己観
と言われています。
欧米の相互独自的な自己観とは、「個人は独立して社会に存在している」とする考え方です。
一方で、東アジアの相互協調的な自己観とは、「個人は他者と共に社会に存在している」とする考え方です。
この自己観の違いにより、例えば何かを達成したときは、
東アジア人:みんなと協力したおかげである
と考える傾向があります。
また、社員の1人がミスをしたら、
東アジア人:係全体の責任である
と考えがちです。
このように、日本は他者との繋がりを重視する文化であるがゆえに、「他人に失礼がないように」という気持ちが自然と生まれ、マナーというものができたのではないかと考えられます。
さらに、日本人は勤勉であり、伝統や集団規律を守る傾向があると言われています。
この性質のため、昔から多くの日本人がマナーをきちんと守り続けてきた結果、多くのマナーが受け継がれてきたのではないでしょうか。
一方で、日本は年功序列型の社会で、上司への忖度が多い傾向もあります。
中間管理職の者が、その上司に失礼がないように忖度して、部下にさまざまなマナーを強要した結果、本来必要とされない謎マナーまでをも生み出してしまったのではないかと考えられます。
【理由③】現状維持バイアス
現状維持バイアスも、謎マナーが存続し続ける理由の1つと考えられます。
つまり、人は変化を嫌い、今のままの状態を居心地が良いと感じる性質があるのです。
例えば、次に示すような例も現状維持バイアスが働いていると考えられます。
・もっとお得なインターネットのプロバイダーがあるけど、変更するの面倒だし、今のままにしておこう
・ずっとau使ってきたから、いくらahamoが安くてもドコモに乗り換える気にならない
・初詣は毎年明治神宮に行くと決めている
こられの例と同じように、すでに習慣化されているマナーに対しても「何の意味があるか分からないけど、とりあえず現状維持でいいか」という心理が働きます。
その結果、良いマナーも謎マナーも世代を超えて引き継がれていったのではないかと考えられます。
【理由④】服従の心理
権威がある者からの命令は、間違っていることでも従ってしまうことがあります。これを心理学では「服従の心理」と言います。
この服従の心理は、アメリカの社会心理学者スタンレー・ミルグラムよって提唱されました。
例えば、もしあなたが医師から「健康のために寝る前にストレッチをしなさい」と言われたら、おそらく従うでしょう。
ところが、同じことを近所の子どもから命令されたら、おそらく従わないと思います。
この服従の心理の例では、「専門勢力」という力が働いています。
人は専門家の意見であれば、従いやすい傾向があります。
最近では、マナー講師という職業が注目を集め、発言力を増しています。
マナーの専門家であるという専門勢力によって服従の心理が働き、その結果マナー講師が提案したさまざまなマナーが受け入れられて広まっている可能性があります。
ここで問題なのが、ごく一部のモラルの無いマナー講師の発言にまで服従の心理が働いてしまうことです。
その結果、間違った謎マナーまでも信頼性を得て、広がってしまうのでしょう。
謎マナーへの対抗策
細かなマナーやローカルルールをいちいち気にしていては気疲れしてしまいます。
でも「意味の分からないマナーでもちゃんと守らないと相手に失礼かも」と心配になってしまいますよね?
しかし、きちんと相手に敬意を払って礼儀を尽くした態度で接すれば、問題とならない場合があります。
例えば、「取引先で出されたお茶は飲んではいけない」という謎マナーに対しては、飲む前と後に一言かければ問題ありません。
飲む前に「せっかくお出ししてくださったので、いただきます」
飲み終わった後も「大変美味しかったです。ごちそうさまでした。」
と素直に伝えれば、相手も悪い印象は抱かないでしょう。
また、就活の面接で「軽装で構いません」という発言を真に受けて、クールビズで行ってしまっても、きちんとお辞儀や挨拶をして、礼儀正しい堂々とした態度をすれば、最初の悪印象を挽回できるでしょう。
逆に、人の中身よりも外見で不合格にするような会社は、こちらから願い下げです。
このように、謎マナーを破るのであれば、破った代わりに礼儀を尽くした行動が示せれば、大丈夫でしょう。
また、マナーを知ってる側の人間が、まだマナーを覚えていない人に対して、マウント取りたいだけの場合があります。
そうゆうマウント取りたがりの人には、ほどよくおだてて受け流しましょう。
気にするだけ労力の無駄です。
まとめ
本記事では、日本でなぜこんなにも多くの謎マナーが存在しているのかについて考察しました。
その結果、以下の4つの理由が考えられました。
【理由①】マウント取りたいから
承認欲求や優越欲求が強い人が、謎マナーを知らない人にマウントを取って、自己満足に浸っていると考えられます。
【理由②】日本の文化的自己観
日本人は相互協調的な自己観を持っており、社会生活において他人を意識しがちであるため、多くのマナーとともに謎マナーも生まれた可能性があります。
【理由③】現状維持バイアス
謎マナーに対して、「何の意味があるか分からないけど、とりあえず現状維持でいいか」という心理が働き、謎マナーが引き継がれていったという可能性があります。
【理由④】服従の心理
近年、注目を集めているマナー講師の発言に対して、服従の心理が働き、多くのマナーに紛れて謎マナーも密かに広まった可能性があります。