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バイアス教育と心理学のブログ

幼い子供はなぜアンパンマンを好きになるのか?【心理学的考察】

巷では、たくさんのアンパンマンのグッズが売られています。

また、子供向けの食料品やおもちゃには、アンパンマンとのコラボ商品が数多く見受けられます。

それは、企業のマーケティング戦略的に、無地の商品よりアンパンマンが描かれたパッケージの方がよく売れるからです。

売れる理由としては、

・赤色が購買意欲を促進させるから

アンパンマンが描かれていることで、誘目性が強くなるから

そして、

子供がアンパンマンを好きだから

「好きだから」という理由は、買うことへの強烈な動機になります。

では、なぜ幼い子供は皆アンパンマンが好きなのでしょうか?

本記事では、幼児がアンパンマンを好きになる理由を心理学的に考察したいと思います。

アンパンマンとバイキンマンの画像

子どもの好きなキャラクターランキング1位は?

理由の考察の前に、まず世間の子どもがどれくらいアンパンマンが好きか見ていきたいと思います。

大手おもちゃメーカーのバンダイが、0才から12才の子どもを対象に行った人気キャラクターのアンケート調査で、次のような結果が得られました。

好きなキャラクターランキング(2018年)

【男女総合(0〜12才児、800人)】

1位 アンパンマン 11.5%

2位 ドラえもん 8.0%

3位 プリキュア 5.6%

4位 仮面ライダーシリーズ 4.4%

5位 すみっコぐらし 4.3%

引用元:バンダイこどもアンケートレポートVol.244「お子さまの好きなキャラクターに関する意識調査」結果

https://www.bandai.co.jp/kodomo/pdf/question244.pdf

 このようにアンパンマンが1位という結果でした。

さらに、年齢を0才から2才に絞って、男女別にランキングを見てみると、

【男の子(0〜2才、100人)】

1位 アンパンマン 31.0%

2位 きかんしゃトーマス 14.0%

3位 いないいないばあっ! 13.0% 

【女の子(0才〜2才、100人)】

1位 アンパンマン 32.0%

2位 いないいないばあっ! 14.0%

3位 ドラえもん 6%

同立3位 しまじろう 6%

という結果でした。

幼児に限定すると男女とも圧倒的にアンパンマンを支持していることが分かります。

それでは、その心理学的な理由について、見ていきましょう。

 

【理由①】単純接触効果が働いているから

幼児がアンパンマンを好きになる理由の一つに、単純接触効果が考えられます。

単純接触効果とは、「特定の人物やモノを何度も見るうちに、その人やモノへの好感度が上がっていく」という心理現象です。

別名ザイアンス効果とも呼ばれ、アメリカの社会心理学者ロバート・B・ザイアンスによって提唱されました。

この心理効果の発動条件は、ただ見るだけです。

その人と話したり、交流を深めたりする必要はなく、繰り返し見るだけで自然と好感を持つようになります。

例えば、

  • 最近通い始めたカフェの店員さんのことが、少し気になるようになってきた。
  • テレビドラマで話数が進むにつれて、主人公をどんどん好きになってきた。

などは、単純接触効果が働いていると考えられます。

また、単純接触効果をマーケティング戦略として狙った事例として、

  • 企業が積極的にテレビCMを活用して、自社商品を視聴者の目に触れさせる。
  • 政治家が、自分の顔が描かれた選挙ポスターを至るところに掲載する。

などがあります。

これらの事例と同じように、アンパンマンが描かれた商品もスーパーやおもちゃ屋、子供服用品店などで、必ず置かれています。

アンパンマンは、幼児向け商品のコラボ先キャラクターとして最も多いと言われています。

このことが、子どもとアンパンマン接触回数を増やし、好意を持つ要因になっていると思われます。

さらに、アンパンマンは主に赤色が使われています。

赤は誘目色の強い色と言われており、目に留まりやすい効果があります。

赤色のキャラクターであることも、アンパンマンへの単純接触効果を増加させていると考えられます。

 

【理由②】幼児は丸みのある形が好き?〜乳幼児の図形選好性〜

子どもがアンパンマンを好きな理由の一つに、アンパンマンの顔が関係しています。

アメリカの発達心理学者ロバート・L・ファンツは、乳幼児がどのような形を好むかということを調べる研究を行いました。

その結果、乳幼児は

①「直線で描かれた図形」より

 「曲線で描かれた図形

②「コントラストが低い図形」より

 「コントラストが高い図形

③「単純な図形」より

 「人の顔のような図形

を好んで注視する傾向があることが分かりました。

この研究から、乳幼児がもし何らかのキャラクターを見た場合、顔の部分を特に好んで注視すると考えられます。

アンパンマンは、顔のほとんどが曲線で描かれています。

そして、コントラストが高い色合いであります。

これらの特徴から、乳幼児にとってアンパンマンは好まれやすい性質のキャラクターであると言えます。

そして、乳児のころからアンパンマンを好んで見ることで、ますます愛着が湧くのだと思われます。

【理由③】幼児は皆、赤色が好き?〜色彩の選好性〜

幼児がアンパンマンを好む理由の一つに、「赤色」であることが挙げられます。

家政学研究者の高橋春子先生の研究によると、日本の子どもは3才ごろまでは男女関係なく赤を好む傾向があるそうです。

赤色が多く使われているアンパンマンは、色の観点からも幼児に好かれやすいと考えられます。

また、他の幼児向けのキャラクターの配色を見てみると、

というように、赤色がメインで使われているキャラクターはいません。

赤色はアンパンマンの独占状態と言えるでしょう。

その結果、幼児の選好傾向がアンパンマンに集中していると考えられます。

【理由④】発語のしやすさ = 親しみやすさ?

キャラクター名の発声のしやすさも、そのキャラクターへの親しみやすさに関係している可能性があります。

乳幼児の発達過程では、以下のように発語を獲得していくと考えられています。

2歳代 ア行、パ行、バ行、マ行、ヤ行、ワ、ン

3歳代 タ行、ダ行、ナ行

4歳代 カ行、ガ行、ハ行

5歳代 サ行、ザ行、ラ行

(個人差があります)

引用元:岩手県紫波町子育ち・子育て応援サイト「キラッとちゃちゃちゃんねる」https://www.town.shiwa.iwate.jp/kiracha/column/5996.html

上の表を見て分かるとおり、「アンパンマン」は、どの音も初期のころから発生しやすく、ママ・パパ・ワンワン・マンマなどと同様に早いうちから発生できるようになると考えられます。

年齢が低いうちから、自ら「アンパンマン」と呼ぶことで、そのキャラクターへの愛着を深めている可能性があります。

まとめ

幼い子どもがなぜアンパンマンを好きになるのか、という疑問を心理学的に考察してみました。

その理由として以下の4つが挙げられます。

  1.  単純接触効果
  2.  図形選好性
  3.  色彩選好性
  4.  発生のしやすさ

赤ちゃんにとってのお母さんと同じで、小さい頃から身近にいると愛着が湧きますよね。