【マズローの欲求5段階説】転スラが特別人気な理由とは?心理学的考察
2021年7月から「転生したらスライムだった件(以下、転スラ)」の第2期後半クールが放送されますが、待ち遠しいと思っている方も多いのではないでしょうか?
転スラ(アニメ版)は、異世界転生系アニメの初心者からコアなファンまで幅広く支持されています。ではなぜこんなにも人気なのでしょうか?
心理学的に説明すると、その理由は、視聴者の「現代社会における特定の欲求を満たしたい」という願いをうまく叶えてくれる作品だからだと考えられます。
それでは詳細をご説明したいと思います。
感情移入のしやすさ
転スラの魅力を語る上での大前提として、感情移入のしやすさが挙げられます。
これは他の異世界転生系(なろう系)のアニメ作品にも共通することですが、異世界転生系ほど自分を主人公になった気分にさせてくれる作品はありません。
なぜなら、世界観はSFであるにもかかわらず、主人公の心情や思考が一貫してリアル社会人そのものだからです。
ここで重要なのが、世界観が非現実であるということです。
周りが現実離れしていることで、コントラスト効果(対比効果)が働き、主人公と視聴者がより近い存在であると感じることができます。
そして、主人公との共通点や共感できる部分が多ければ多いほど親近感が湧き、感情移入しやすくなります。
転スラでは、例えば主人公の三上悟は、
「30代」
「男性」
「サラリーマン」
「今まで彼女いない」
「後輩がいる」
などの人物設定なので、これらの特徴と共通点があれば、物語に没入しやすくなるでしょう。
また、これらの特徴とあまり一致していない人でも
「どこの世界も人間関係はめんどくさいんだよな。」
(転スラ 1期4話)
「接待される側ってのはいいな。人間だったときはする側でいろいろ気を遣ったもんな。」
(転スラ 1期5話)
「取引なんて案外酒の席でうまくまとまったりするものだしな。」
(転スラ 2期2話)
出典:アニメ「転生したらスライムだった件」より
などのセリフからリムルが、どこにでもいるようなサラリーマンであることを感じさせ、身近な存在であることを引き立ててくれます。
以上のような理由から感情移入しやすいと言えるでしょう。
視聴者の欲求をリムルが代わりに満たしてくれる?
転スラが人気である本命の理由は、視聴者が潜在的に欲している欲求を、感情移入したリムルが代わりに満たしてくれるからです。
アニメを見ているだけで、現実に欲求を満たしたときのようなスッキリとした感じを体感することができます。
この理屈を、マズローの欲求5段階説を用いてご説明します。
マズローの欲求5段階説とは?
アメリカの心理学者A・マズローが提唱した、ヒトの欲求レベルは5段階で構成されているという以下に示すとおりの理論です。
【第1階層】生理的欲求
呼吸、食事
【第2階層】安全欲求
身体の安全確保、雇用の確保
【第3階層】社会的欲求
友情、家族愛
【第4階層】尊厳欲求
自尊心、他者からの尊敬
【第5階層】自己実現欲求
理想の成就
マズローは人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲すると説きました。
出典:行動経済学見るだけノート
日本においては、第1・第2階層にとどまっている人は少数であり、多くの人は第3階層以上に属していると考えられます。
第3階層の社会的欲求が擬似的に満たされる?
第3階層にとどまっている人は、リムルに感情移入することで第4階層に上がることができると考えられます。
最近は一人で何でもできてしまう「お一人様時代」です。
一人焼肉や一人カラオケというワードの出現がその証拠です。
しかし、人は本来「どこかの集団に所属していたい」、「友情や家族愛が欲しい」といった社会的欲求を誰しも持っています。
転スラの世界では、リムルが大勢の仲間に囲まれて、友情や仲間の愛を感じさせてくれるシーンがたくさんあります。
シオンやシュナ、ランガ、ゴブ太を始めとした大勢の登場人物が「リムル様!リムル様!」と慕ってくれます。
視聴者は感情移入するだけで自動的に社会的欲求を満たすことができ、上位の第4階層に上がることができるのです。
第4階層の尊厳欲求も擬似的に満たされる?
もともと第4階層にいた人も、アニメの効果で第3階層から上がってきた人も、またリムルが第5階層へ連れて行ってくれます。
第4階層は「誰かから尊敬されたい」、「自分を尊敬したい」という尊厳欲求が満たされていない人がとどまっている階層です。
転スラでは、リムルに対してゴブリン村の人々、鬼神族たち、ランガ、その他にも多くの仲間がこれでもかというほど尊敬してくれます。
また、リムルも仲間たちに対して尊敬されるべき数々の行いをしています。
仲間たちの感情は、リムルの行為に対して向けられているので、視聴者も納得しやすいと思います。
以上の理由から、リムルに感情移入することで視聴者の尊厳欲求が満たされ、次なる第5階層へ行くことができるでしょう。
第5階層の自己実現欲求はどうか?
自己実現欲求とは、自分の理想を成し遂げたいと思う欲求です。
以下に示すりような理想は誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか?
・もしも、魔法が使えたら、
・自由に空が飛べたら、
・美男、美女に変身できたら、
・強大な力を持っていたら、
これらすべてを三上悟は手に入れました。
異世界に転生したことによって、魔法も使えて、空も飛べて、シズさんに変身できて、超強力なスキルを保有しました。
そして、リムルにしかできない特別な力もあります。
リムルに感情移入すれば、あたかも自分が、魔法が使えるようになったり、空が飛べるようになったりと錯覚し、とても心地良い気持ちになれることでしょう。
また、第5階層は成長欲求とも呼ばれ、成長し続けることで、さらに満ち足りた感覚を得ることができます。
物語が進むにつれてリムルが、ユニークスキル「捕食者」を使い次々と新しい技や強大な力を手にし、成長していく様子は、見ていてとても気持ちがいいです。
転スラを見ることで、視聴者は第5階層の欲求をも自然と満たすことができ、大きな満足感を味わうことができるのです。
まとめ〜ヒットの秘訣〜
転スラがこんなにも人気である理由は、
・周りの世界観との対比で、主人公リムルのリアル社会人ぶりが際立ち(コントラスト効果)、感情移入がしやすいため、主人公気分が強く味わえる。
・大勢の仲間に囲まれて、友情や家族愛といった感情を得ることができ、視聴者の社会的欲求が疑似的に満たされる。(マズローの第3階層)
・多くの仲間や部下たちがリムルを尊敬し、慕ってくれることで視聴者の尊厳欲求を擬似的に満たすことができる。(マズローの第4階層)
・強力魔法やスキルの行使、飛行能力といった誰もが夢見ることをリムルがやってのけ、さらにどんどん強く成長していくことで、視聴者の自己実現欲求を擬似的に満たすことができる。(マズローの第5階層)
以上のことから、特に社会生活でうっぷんがたくさん溜まっている人なんかは、アニメ「転生したらスライムだった件」を見ることでとても心地よい気持ちになるのではないでしょうか。